コイパーク総合メニューに戻る
コイヘルペスウイルス(KHV)について


日本魚病学会 KHVシンポジュウム。2005.9.30

1
7年度日本魚病学会大会(三重県開催)の中で KHVシンポジュウムが開かれました。東海地区の振興会の方々、一般愛好家も参加できるとのことでしたので研究成果を聞きにいきました。

日本でKHVが確認されてからもうすぐ2年、徐々に研究も進んで来ているようです。まだまだ解明されたわけではないです。(以前から研究はしていたかもしれませんので、本格的になったというのが正しいのかな。)

今日の研究発表の中で、へぇ〜と思ったことを記述してみます。

魚体から離れた(環境中に出た)KHVはどうなるのか?

湖水、汚泥の無処理水にKHV添加


水温15、20、25℃で3日間でKHV検出限界 30℃で1日で検出限界。

湖水等の濾過滅菌水にKHV添加


一週間後でも完全に不活性化できなかった。

湖水等の高圧殺菌水にKHV添加


一週間後でも完全に不活性化できなかった。


実験の水は、霞ヶ浦の湖水及び汚泥、鶴見川の河川水、五稜郭の堀の水、を使用し培養したKHVを添加して観察したとなっています。

五稜郭の堀の水で実験水をつくり(KHVを500TCID50/mlになるように添加)、水温は21〜23.6度、直後に入れた鯉(10匹)は致死率90% KHVも回収され、実験水を3日間放置したのち入れた鯉(10匹)は一匹も死ななかったという結果となったそうです。すぐに入れたものは6日目から死に始め10日目には80%ぐらいの累積死亡率でした。

どうも、水中の微生物がウイルスの不活性に関与している可能性があるらしいですね。
バクテリアが分解しちゃうんでしょうかね。自然のバランスはすごいな〜とおもってしまいました。

宿主(コイ)がいなくなったら、ウイルスがいなくなっちゃう(検出限界)ようです。

で、そのような微生物(KHVを不活性にさせる)がいるのかを調べてみたら、
鶴見川で、供試菌株数137の内、陽性菌数が10。
霞ヶ浦で、供試菌株数47の内、陽性菌数が0。
市販の鯉の腸内、供試菌株数の65内、陽性菌数が4。だったようです。全部調べ切れていないと思いますけど、いたのは確かなようですよ。


KHVを不活性化させるには(消毒するには)

50℃以上、1分で不活性化。


各種消毒液では、有効ヨウ素濃度200mg/L、塩化ベンザルコニウム濃度60mg/L、エタノール30%溶液


次亜塩素酸ナトリウム溶液とウイルス液を混ぜた場合、有効塩素濃度が0.3mg/Lになるとほぼ不活性化。
実用的にはその十倍、3mg/Lが推奨。

塩素は有機物で分解されるので、実際の池の水、河川の水の場合、蒸留水に最大11.2mg/Lとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えれば、3mg/Lとなったそうです。

紫外線では4000μW・sec/cm2の紫外線照射でOK。一般的な殺菌灯でいけるみたい。


KHVはウイルスとしては弱い部類のだとのことです。


KHVが出たその後。


現状で、KHVが出ていないのは山口県だけらしいです。KHVがいままでの病気と違うところはどんな鯉にも感染が広がる点だそうです。

一昨年、児島湖 霞ヶ浦、去年、琵琶湖となっていますが、翌年以降はKHVによる死亡はほとんど確認されていないようです。(インドネシアでも同様の様、ワクチンも使用も聞いていないということです。)
2004年の霞ヶ浦における飼育実験では供試魚(非感染魚)がKHVによって死亡した報告があるようで、生き残っている野生固体がKHVを出しているつまり環境上にKHVはいるようです。

琵琶湖では2004年から翌2月18日まで採取した活コイ124匹の抗体を調べた結果、38cm以上の鯉25匹の96%は免疫陽性、38cm未満の鯉99匹は92%が免疫陰性だったようです。このことから2005年はKHVを発病させるだけのウイルスがいなかったと考えられKHVによる斃死が確認でなかったと思われるそうです。38cm未満の鯉の大多数が2004年にKHV病に完成していない可能性が示唆されるそうです。

2004年(4月〜8月にかけて)にKHVの大量死がでた琵琶湖周辺6水域で2005年5月26日〜7月25日まで、鯉を飼育してみたところ、斃死は見られたもののKHVは検出されなかったとのことです。

私的には、霞ヶ浦と琵琶湖での飼育実験に差があることから、野生の感染耐過魚から放出されるKHVの量の水系における密度によって対策も変わってくるかな〜という印象でした。水量に対する感染耐過魚の割合が多くなれば、非感染鯉が発病するだけのKHV濃度に達してしまうのだろうということでしょう。


媒介となる魚っているのか。


KHVにじゃんじゃんつけても、アユ、フナ、ウグイは非感受性で非保菌だそうです。どうもKHVは鯉しかかからないのでは〜!?のようです。

SVC(春ウイルス)は反対に、宿主域(わかっているだけで、コイ、フナ、ソウギョ、ハクレン、コクレン、テンチ、ローチ、ヨーロッパナマズ 等)が非常に広いウイルスだそうです。何から感染するかわからないので、そういう点でこわいと言ってみえました。


KHV以外でいままでに蔓延した(国内で)ウイルス。


IPN(ニジマス)、IHL(マス類)、EIBS(ギンサケ)、キンギョヘルペス、

鯉の浮腫症とねむり病(この2つの病気は同じウイルスが引き起こし、20度以上であれば浮腫症、低温ではねむり病になるそうです。ためしに取り寄せた10ロット中9ロットが持っているぐらい広がっているようです。0.5%食塩水で治って、そのメカニズムも研究結果として持っているようです。)


低温時におけるKHV病。


感染個体は低温期(13℃以下)には発病せず、免疫も獲得しない。PCR検査でも陰性であるそうです。(実験室では低温で飼育したら何ヶ月(9ヶ月だったかな!?)も生きていて、その後温度を上げると発病して死んだといわれていました。)


KHVの増殖


KHVで死亡が確認されるまでに、他の個体を感染させるに十分なウイルスが放出される。

(たぶん、どじられた場所での話となるとおもうのですけど、池とかで)鯉ウイルスで死んだとわかったときには、時間的にみてまだ死んでいない鯉もほとんどが感染していると考えた方がよく、特に検査にだして結果がもどってきたときには時間的にみて無理だということです。


KHVを駆逐できた国は?


現在のところ、まだない。


KHVの活発な温度


23℃のようです。


KHVにかかると


背ヒレがねていく(ぴたっとつける)、体色にむらが出る、末期には体表に粘液がでて白くなる。このような症状がでるようです。

感染後、体表等に異常をきたした固体(末期)を32度に昇温すると治療効果が得られ、再感染に耐性を示す。プレゼンでは写真も出ていましたが温度をかけて感染耐過魚になれば体表の状態は元に戻ってました。感染耐過魚になっても保菌状態(菌じゃなくウイルスですが)に


ウイルスフリーの鯉は作れるか。


鯉の発眼卵は有効ヨウ素濃度200ppmのポビドンヨード15分処理に耐性で、KHVは12ppmの濃度で完全に不活化されることから、感染耐過魚が保菌状態にあっても、卵を消毒することでウイルスフリーの子鯉を作ることは可能のようです。


KHVの系統


遺伝子解析によりKHVの系統を探ると、日本の場合は、イスラエル型より、アメリカ型及びインドネシア型に近いことが明らかになったそうです。


KHVの遺伝子的特長


KHVは塩基配列に繰り返し配列が多いのが特徴で、なおかつ、免疫を抑制する遺伝子の存在が確認されるようです。

新たにPCR法の開発もでき、従来の100倍程度の感度が得られるようです。


KHVワクチン


リポソーム(脂質2重膜の小胞)封入型経口ワクチンについて有効性が認められるようです。

抗原封入リポソームは、腸管粘膜における局所免疫にとどまらず、全身免疫反応を誘導するそうです。

リポソームワクチンの利点
1)細胞親和性(細胞に取り込まれやすい)。
2)リポソーム自体がアジュバンド作用を示す。
3)リポソーム自体が無害。
4)扱いが楽。

また、餌に混ぜて食べさせるだけなので手間隙が楽、ただ、若干ワクチンとしての持続効果が短いという話も出ていた。


話を聞きながら、他の応用範囲も広いリポソームってすごいな〜と思いつつ、KHVリポソームワクチンを使えば、未感染でありながら感染耐過魚を作ることになるのでKHVに感染しても死ぬ事はなくなるため、その後、感染して保菌状態にあっても症状がでないだろうし、わけわからなくなったちゃうな〜と感じました。

あと、KHV感染後、昇温して感染耐過魚となったのと(こちらはまず保菌状態でしょう)、ワクチンによって感染耐過魚になった鯉がKHVに感染したとき(これもまず保菌状態でしょう)の違いってなにかあるのかな〜と思いました。状態に変わりがないのであれば、普段から餌にませる経費と昇温するための燃料費を比べて安いほうを利用するのが人情ではと感じました(法律論はおいておいて)。

KHVになってない鯉に、ワクチンを食べさせてKHVに備えるのと、なってから昇温する違いってなんだろうって考えちゃいましたね。昇温したほうが楽チンのような!?

ワクチンによってKHVの保菌状態もなくなるのであれば(すぐにでなくとも)すばらしいんですけど、KHVの場合、感染後早い段階で死亡しないとPCR法検査に引っかからないという報告もあるし(感染後時間をかけて死亡すると陰性になってしまう)、現状では長いスパンでの保菌状態を把握するのは難しそうなので、今後の研究に期待という所でしょうか?

自然にあるいは
昇温によって感染耐過魚となった鯉(抗体ももって保菌もしている)と、ワクチンで感染耐過魚となった鯉(抗体は持つが保菌はしていない)との違いがわかるのかどうかも知りたかったですね。死なないわけですので保菌側もPCR法検査にかからない可能性もたかいかもしれませんし、保菌しているのか、していないのか、がわからないことになってしまうとなにかと不便なような〜!?。


コイヘルペスウイルス(KHV)についての私見。2004.1.28 時点


11月2日に報道されてから、今までいろいろな情報が流れましたが、 現時点ではこのように個人的に理解するようにしています。

KHVに関して分かっていることは少ない。ウイルスである以上対処療法がメインとなる。
ワクチンに関しても同じ正確な情報はない。
グレーゾーンを黒とみなして考えると以下のような感じとなるのではないでしょうか?

コイヘルペスウイルス(KHV)と共存を図る場合。

現状で飼育している鯉には、何らかの形で耐過鯉となってもらい、KHVウイルスに感染しても死なないようにする必要がある。
温度調節法が有効のようである。感染鯉とともに31℃以上での飼育。

耐過鯉となってもウイルス自身が体内から消えるという確証はない。
耐過鯉となっても鯉自身が弱れば発病する可能性がある。(ほかの鯉も耐過鯉なので、他は発病しない可能性が高い)
耐過鯉となっても悲感染鯉に感染させる能力は持つと考えられる。(すべての耐過鯉とはいえない。)

つまり、池の鯉すべて耐過鯉となってもらう必要がある。
新規購入鯉が、悲感染鯉の可能性がある場合、耐過鯉となってもらう必要がある。


コイヘルペスウイルス(KHV)と共存しない場合。
KHVを絶対に飼育池に入れないために、 購入鯉は、KHV発病水温(18℃〜25℃)にて隔離様子を見る。飼育池とは完全隔離した状態で行わなければならない。器具等の共用も不可!。
発病すれば、即処分、使用機材等も塩素にて消毒する。

発病しない場合、購入した鯉が耐過鯉でないことを確認するために、非感染鯉を同居させ、感染しないかどうかを確認する。
感染すれば、耐過鯉であると判断し、即処分、使用機材等も塩素にて消毒する。
それを何度かくりかえし、耐過鯉でないことを確認する。

その後、池に放す。

これでもあくまで、 耐過鯉でない可能性が高いだけであって100%とはいえない。現状ではこれしか判断出来ないと思う。


一番良いのは、HKVがすっきり解決するまで、新規鯉を購入しない、他の鯉と接触させないことだが、
現実にきるかどうかは、とても難しいこと考えている。
(だから、心配してもしょうがないので鯉を買おうという意味ではないですよ。ともかく注意は必要です。)


コイヘルペスウイルス(KHV)について


ドイツ報告の日本語訳です。
この報告書は、鯉やさんでいただいたペーパーです(2003.11.13)
。現在私の持っている資料の中では一番詳しい物です。海外のコイヘルペスウイルス(KHV)関係のHPと比較しても、大きく異なる点はないので信頼度は高いと思われます。

ウイルスの特徴。
1  ウイルスは食用鯉と錦鯉にしか感染しない。
ウイルスは水温が18℃〜25℃のときに発病し、そのまま放置すると死亡率は80〜90%に達する。
ウイルスの潜伏期間は水温によって多少異なるが、10日から12日である。
感染した鯉は感染後2日から2週間以内に二次感染を引き起こし、感染後4日に感染力はピークを迎える。

対処法
現在、イスラエルではウイルスを弱体化させたワクチンを使用しているが、扱いが難しく、−70℃に冷却した状態で保存し、使用の際に常温に戻す。
治療薬は存在しない。
イスラエルからの詳細の指示
治療方法としては、感染した池は水温を最低20日間30℃以上に上げる。この処置により、死亡率は30〜40%に引き下げられる。そうるすことにより、生き残った鯉は抗体を作ることができ、二度と感染することはない。
発病後、生き残った鯉は抗体を持っており、他の鯉には感染しないので、キャリアではない。尚、それらの鯉のRCR反応はイスラエルでは、すべて陰性だったが、ドイツでは陽性だった報告もある。
RCP試験はウイルスのDNAの一部を検出するため、ウイルス自体がなくなっていても陽性反応が出ることがある。その為ウイルスの存在の確認には実際に鯉をウイルスが活動しやすい水温22℃前後の水温で一週間ほど確認することをイスラエルでは勧めている。
ウイルスの拡散防止策は完全な隔離、すなわち鳥、道具、人間及び水の往来を完全に防ぐこと。道具などの消毒は塩素で出来る
水温が下がってきている為、ウイルスの活動が鈍くなり、感染が分からない可能性がある。その為、水温が上がる春先はまた注意が必要です。

個人的に数点気になるところがあります。
ウイルスの特徴の1
  ”感染鯉が食用鯉と錦鯉となっている”が、真鯉も感染している。ドイツには、真鯉がいないだけかもしれないですが、、。
対処法の4
  ”生き残った鯉は抗体を持っており、他の鯉には感染しないので、キャリアではない。”
となっているが、他の海外のHPでは、キャリアとなり他の鯉への感染を引き起こすという報告もある。
AKCA-Koi USA アメリカの有名なサイト、錦鯉のための非営利組織です。
http://www.akca.org/kht/virusalert.htm (AKCA-Koi USA内 KHVに関する情報)

NHKのクローズアップ現代(2003.11.18放送)にて、水産学の研究者が、このウイルスは、感染した鯉や感染によって死亡した鯉からウイルスが出て水を介して他の鯉に感染すると話していた。
(キャリア鯉に関しての話はなかった。)
番組中での、感染経路の可能性として、海外のKHVと、霞ヶ浦、岡山のウイルスの遺伝子が一致する部分が多いので、海外から持ち込まれた可能性が高い。
1、感染した鯉を海外から持ち込んだ?。
2、感染しても発病しない魚(食用・観賞魚)を介して持ち込まれた?。
3、海外からの水(食用・観賞魚)にまぎれて持ち込まれた?。
この3つを指摘していた。

水を介して感染するのは間違いなさそう。

  KHVは完全に解明されたものではありません。最新の研究によって明らかにされてくるでしょう。ただ、現状では、対処の6に書いてあるように、”ウイルスの拡散防止策は完全な隔離です”これが本音だと思います。

コイパーク総合メニューに戻る